スギ花粉症の季節になりましたね。
私もシーズンになると鼻水とくしゃみが止まらず、たいへん苦しい毎日を送ることになります。近年は効果が高い花粉症の市販薬も種類が増えてきている印象ですが、完全に症状を抑える薬に出会ったことはなく、それを考えると薬にかけるコストは抑えたいという思いが強くなってきます。
そんな中で、やはり花粉症である職場の同僚が「葛根湯が案外効く気がするし、花粉症の薬より安いよ!」と教えてくれたのですが、葛根湯といえば風邪薬のイメージが……きょうは花粉症に葛根湯が効くのかどうか検証します!
花粉症の科学! まずは花粉症の基礎知識を抑えよう!!
年々増えている印象だけはある日本国内の花粉症患者。それに関して正確なデータはなかなかない現状、少し古い資料にはなりますがアサヒ飲料が2012年におこなった「花粉症意識・対策実態調査」
(https://www.asahiinryo.co.jp/company/newsrelease/2012/pick_0229.pdf)
が全国規模で統計をとった現時点最新データといえるでしょう。
現在の患者数は8000万人以上!?
これによれば、花粉症を自覚する人が日本に5500万人いると推定されるという圧倒的な数が示されており、443万人が毎年「花粉症デビュー」しているとも書かれています。
このペースが仮にキープされていると考えれば、現在日本人のうち8000万人以上が花粉症であるという計算になってきます。なぜ毎年花粉症患者は増えていくのでしょう。またそもそも花粉症とは何なのでしょうか?
花粉症の実態
植物が子孫を増やすための仕組みである花粉は人間の身体にとっては異物であり、このように異物が身体に侵入してきた時に人間は外敵侵入から身を守る仕組みを持っています。
花粉の場合はIgEという物質が花粉をつかまえた時にできるヒスタミンなどの物質がくしゃみや鼻水鼻づまりを誘発するのです。すなわち、鼻づまりで入口を完全封鎖、くしゃみで異物を跳ね飛ばし、鼻水で鼻を洗浄するという、身体を守る人間の仕組み「が強すぎてつらいです」、というのが花粉症の実態ということになります。
こうした人間の仕組みは本来、寄生虫やウイルスなど人間に悪さをする生き物から身体を守るためのものであり、花粉に対してそんな防衛をすることは無意味なことでなのです。
花粉症にならない人は花粉に強いというよりはむしろ花粉にIgEが反応せず花粉と共生できている人ということができます。花粉と共生できず花粉に敏感に反応しすぎる花粉症患者が、なぜ加速度的に増えているのでしょう。
ここまでの花粉症に関する知識をまとめる際にも参考にした、石井保之『花粉症のワクチンをつくる!』(岩波書店)は、花粉症とその治療薬開発の最前線がわかりやすく書かれた本です。
この本によれば日本で爆発的に花粉症が増えた原因には、戦後日本のスギの植林はもちろん衛生的すぎる環境要因、また寄生虫の監視というIgEの本来の仕事がなくなったこと、大気汚染が花粉症を誘発するなど、複数要因が現代日本において重なったことがあるだろうということです。(みなさんに説明するために話を単純にしています。専門的に興味がある方はこの本をおすすめいたします。)
『花粉症のワクチンをつくる!』は花粉症の治療薬についての本でもありますから各治療薬の細かい説明もありその詳細は本に譲ります。しかし、この本を読むとドラッグストアで売っている花粉症の治療薬がなぜビミョーにしか効いてないように感じるのか、その理由も科学的に書かれています。
それを再び簡単にわたしの理解でまとめれば……花粉症はIgEによるとわかっているのにIgEの仕事を正常化させる(花粉に反応しないようにする)薬はまだなく、花粉症の薬は単純に鼻水や鼻づまりやくしゃみといった症状に対する対症療法の薬にすぎないのです。
花粉症の根本的な薬が実はまだないのだとすれば……西洋医学的な花粉症の市販薬も、葛根湯などの漢方薬も、案外同じレベルなのでは……という可能性が出てくる感じが私はしてきましたよ?
次は会社の同僚がプッシュしていた葛根湯について調べていきます!
葛根湯とは?
葛根湯という漢方薬はその文字面から当然のごとく葛(くず)の根っこを乾かしてみたいな話を想像していました。しかしたしかに「葛根」は葛根湯の主成分ではあるものの、葛根湯は葛根、麻黄、桂皮(シナモン)、芍薬、生姜、大棗(たいそう=ナツメ)、甘草をミックスした漢方薬であるのでした。
これを知るだけで、精製された化学物質を配合した西洋医学の薬と特に大差ないということがイメージできるのではないでしょうか。だって生薬も化学的に見ればそうした化学物質に見えるはずで……7種もの化学物質群の配合物である葛根湯がなんだか頼もしく見えてきます(笑)。
葛根湯は鼻炎に効果がある!
そんな葛根湯は何に効くのか仕事帰りのドラッグストアで改めてパッケージを見てみたのですが葛根湯といっても各社さまざまにラインナップがあるものです。顆粒剤もあればドリンクもあります。
私はすっかりなんとなく3本のミニボトルが一箱に入ったドリンクのイメージしかなくなっていました。また、7種類以外のものが細かい成分でパッケージにのっており、ハチミツが入っていたりセルロース(植物繊維)が入っていたりと、それぞれに工夫があるようです。
そしてすっかり風邪薬とばかり思っていた葛根湯の箱には鼻炎にも効くとはっきり書かれておりもっと言えば筋肉痛にも肩こりにも効くと書かれているではありませんか?
葛根湯は花粉症の市販薬と同じ効果が期待できる
葛根湯が鼻炎に効くのであれば、花粉症の薬といいつつ鼻の炎症まさしく鼻炎をおさえようという薬が市販されている現状のなかで、花粉症に葛根湯をのむことはまったく問題がないどころか、花粉症の市販薬と同程度には正解、ということができるでしょう。
「でしょう?」とドラッグストアの薬剤師さんに聞いてみました(笑)。
この薬剤師さんによりますと、「たしかにそうなのだがそうであるがゆえに」漢方薬だってまぎれもない薬なので、普通の薬と同じようにたとえば「のみ合わせ」には注意したほうがよいそうです。
通院中の人は「お薬手帳」をドラッグストアの薬剤師さんに見せて相談するのが一番正確ということですが、わたしはお薬手帳を持ち歩いてはいないので病院でもらっている薬の名前を言ってみると、「あっ、それ高血圧のやつですね、じゃ葛根湯はダメ、たとえばこっちの……」ちょっとおしゃべりするつもりでふってみたら、すごい医学の問答をしてしまい、たのしい夜となりました(笑)。
まとめ
きょうは「花粉症」と「葛根湯」をつなぎました!
花粉症の科学についてはもう一度『花粉症のワクチンをつくる!』という本がとにかくわかりやすいのでオススメしておきます。
また少し話がズレますが、ドラッグストアの薬剤師さんに薬のことを聞いてみると、やはりプロの知識はすごいなあと思うことうけあいです。全員がそうではないのかもしれませんが……すごい薬剤師さんがいるドラッグストアを見つけておくのも大事なような気がしてくるのでした。
葛根湯が鼻炎に効果があることは意外な事実でしたが、そんなことよりも早くこの花粉症の季節が過ぎ去ってくれることを期待するのでした。
(おわり)
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