季節は春真っ盛り。日曜日の午後、子どもと公園まで散歩に行くと、広場一面にタンポポが元気よく咲いていました。タンポポの茎で笛ができること、みなさんもご存知でしょう。
笛の作り方吹き方を子どもに教えていると、最初はよろこんで笛を吹いていた子どもでしたが、「タンポポの茎はなんでストローみたいなの?」「白い汁が出てくるのはなあに?」「なんでタンポポの茎には葉っぱが一枚もついてないの?」とタンポポの茎についての疑問で、頭がいっぱいになってしまったようです。
わたしもそう言われると答えられないことだらけで、タンポポという植物がなんだかどんどんどんどん、不思議ないきものに見えてくるのでした……
まずは「タンポポ笛」のつくりかたをご紹介!!
ご存知の方も多いとは思うのですが、いまもむかしも、タンポポといえば「ブーっ」とおもしろい音が出る笛は、子どもたちに大人気です。タ
ンポポの茎をちぎりとり、花も捨ててしまって、5センチくらいの、茎のストローを用意します。そのストローの先端をぎゅっと強くつぶして、そのつぶしたほうを口にくわえて吹くと、音が鳴るんですよ。みなさんも「タンポポ笛」、久しぶりにやってみませんか??
「中空の茎」は軽くて丈夫で組み立てやすい!!
ところで笛になるタンポポの茎は、なぜストローみたいに中身がからっぽなのか教えろと、わが子のなぜなぜ大会はここからはじまったのでした。タンポポに限らず、植物は種類ごとにさまざまな形に進化してきたわけで、その形の全てに答えを求めていくことには、どうやら限界があります。
人間の指が5本でも、タコの足は8本なのです。その違いに理由を求めることには限界があります。が、それでもしかし、タンポポの中空の茎にメリットがあるとすれば、それは何でしょうか。
同じ太さの中身が詰まった茎と比較したとき、ストロー状の茎は、「軽くて丈夫」といえます。
中身が詰まっていると茎が重くなるので、風に吹かれたときに受けるダメージが大きくなります。
構造的にもストローより弱くて折れやすいでしょう。このあたりまでのことは、野球の金属バットの構造を思い浮かべると、わかりやすいかもしれません。
また茎のなかをぎっちり詰めるだけの材料が節約されていると考えれば、その節約のぶんだけ早く茎を伸ばすことができる、と考えることもできます。
考えてみれば不思議な、タンポポの「花茎」
タンポポの茎には葉っぱが一枚もなく、葉っぱは地面に張り付くように広がり、茎の先端に花だけがついています。このタンポポの形態が不思議だと我が子が言うまで、わたしは「タンポポはタンポポ」と思っていたのですが……考えてみればたしかに不思議かも……。
花茎の不思議
調べてみると、実際にはタンポポに限らず、ハスの花、ゆりの花、菖蒲の花などなど、結構多くの花が、すらっと伸びた一本棒の茎の先端に花がついているかたちになっており、それらの茎には葉がついていません。
このように、頂上の花を支えるためにある茎を、植物学的な分類の言葉で「花茎(かけい)」といいます。
タンポポはなぜ「花茎」をもつ形式を持つようになったのでしょう。
この疑問はそのまま、タンポポの葉っぱがなぜ「花茎」につかずに、下のほうでうすく丸く広がるようになったのか、という疑問に言い換えることができます。
ロゼットの大切さ
タンポポが選んだ、地面にうすく丸く葉を広げる形は、植物学的な分類の言葉で「ロゼット」といいます。」
タンポポの「ロゼット」は、葉の重なりを少なくすることで光合成の効率をアップしたり、春に花を咲かせる準備期間の冬に自分の体温維持よりも成長にパワーを使うためだったりと、やはりそこにはメリットを考えることができるのです。
葉が「ロゼット」で地面に広がることにメリットがあるなかで、タンポポの花も地面に近いと、蜜を吸いながら受粉を手伝ってくれる虫がタンポポの花を見つけにくい、という問題が発生してきます。
そこで、花だけは「花茎」でもって高く持ち上げて、虫に見つけやすいようにしようというのが、タンポポがとっている「戦略」となります。
丈夫な「花茎」のための白い汁の成分は…
タンポポは黄色い花の時期から、真っ白ふわふわの綿毛の時期に、気づけばいつの間にかかわっているのですが、この間の出来事にも「科学」が詰まっています。広場一面に満開、というような全体の風景で見ていると、気づくことができませんが、ひとつのタンポポの花に注目すると、その花が咲くのはせいぜい3日ほどだそうです。
花茎の役目
この間に受粉を成功させると、次は種を充実させるのが仕事の期間になり、花を高い位置に持ち上げるパワーを節約するため、タンポポの「花茎」はいったん倒れます。
そして茎を倒しておいて、種を作っている間に、タンポポは「花茎」じたいをさらに成長させています。倒れた状態で長さを伸ばしていっているのです。
また茎の直径は細くなるでしょう。とにかく長さを確保したいので、太さ方向の材料は節約するのです。(タンポポの笛は茎が太いほうが鳴りやすいので、綿毛の茎ではなく、花のついた茎を使うようにしましょう)。
そうして種が完成したときには、再びパワーを使って「花茎」を立てて、花が咲いていたときよりも高い位置に種を持っていきます。そうすることで、種が風によって運ばれやすくなるように、考えているのです。
白い汁とは?ゴム!?
このようにタンポポの「花茎」は、成長の度合いに応じて、立ったり寝たりという運動もするため、よけいに軽くて丈夫である必要があります。ですから、茎を丈夫にするための工夫として、「花茎」を折ったときの断面にみられる「白い汁」もあるのです。
あの「白い」成分の正体、それはなんと「天然ゴム」なのです。ゴムだから丈夫、というだけでなく、この天然ゴムには「アルカロイド」という毒の成分も含まれています。
タンポポの笛を吹くときに、少し苦い味がするのが、この「アルカロイド」の味です。人間の身体にはその程度の影響ということになりますが、植物を食べ物にしたい小さな動物たちにとっては、この量のアルカロイドは猛毒になりえます。
そうしてタンポポは自分の身体を守ってもいるのです。
まとめ
子どもに聞かれてわかるように、子どもが納得するように、植物の本を図書館で借りてきて、タンポポについてわかりやすい言葉で、いろいろとまとめてみました。
おそらくはタンポポに限らず、どんな動植物もそれぞれに、戦略的に生きているはずで、その神秘には感動してしまいますね!
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